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輸入差止制度の解説

輸入差止と商標登録

関税法69条の11条には、知的財産権の侵害品などが輸入される際に差止められることが規定されています。

ここで知的財産権の侵害品とは特許権、意匠権、商標権が設定された物及び不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号に係る物をいいます。

このうち、最も即効性が高いのが登録商標が付された物品の差止です。登録商標が付されているかどうかの判断は容易で、専門委員のような高度の学識がなくても判断できるからです。

新規開発品の売上げが好調な場合には、特許権、意匠権だけでなく、是非とも商標権も確保しておきたいものです。

日本の水際制度の解説

財務省の平成21年3月6日付の発表によると、偽ブランドバッグや海賊版DVDなど知的財産権を侵害した商品について、税関が2008年に輸入を差し止めた件数は2万6415件と、8年連続で過去最高を更新しました。
交通・輸送手段の発達はもちろん、最近はオンラインショッピングによる海外発注などで、知的財産権を侵害する、または、その可能性のある商品がますます簡単に、かつ頻繁に輸入されるようになった結果です。
これに対して税関が「知財立国を目指して、知的財産侵害物品の水際取締りを強化しています。」ウェブサイトで主張するように、知的財産の税関における水際取締りはより厳しくなり、制度や手続きが複雑化しております。

差止め申立てとは

特許権者等が自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対して侵害認定手続を執るべきことを申し立てる制度です。
従来より侵害するおそれのある貨物を発見した場合には税関は職権により侵害認定手続を開始することもできます。
しかし膨大な貨物の中からそのような貨物を発見することは容易ではありません。

そこで権利者等自らが侵害するおそれのある貨物の発見に有用な情報を提供してそのような貨物の発見を容易にし認定手続の開始を促すことができます。
申立てに際しては貨物の輸入が侵害を構成することを疎明するために必要な証拠の提出が必要です。
弁理士等が作成した鑑定書を証拠として提出することが一般的です。

差止めの申立てがあると、その内容を税関ホームページに公表する等して利害関係者に意見を提出する機会が与えられます。
意見が提出された場合はその意見も踏まえたうえで、侵害の事実を疎明するに足りる証拠があるかどうかの審査が行われます。 

利害関係者から意見が提出された場合の他、必要と認めるときは専門委員に意見を求め、申立てを受理するか否かが決定されます。
申立ての対象となるのは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権及び育成者権を侵害する貨物の他、不正競争防止法(第2条1項1号から3号)に違反する貨物となります。

無審査で登録された実用新案権については、実用新案技術評価警告書及び警告書の提出が必要となります。
不正競争防止法による申立てについては、経済産業大臣に意見書を提出する他、第3号に規定する形態模倣品の場合は侵害行為警告書等の提出が必要となります。

認定手続とは

輸入貨物の中に、知的財産を侵害すると思われる貨物が輸入されると思われるときに、その貨物が知的財産を侵害するものであるか否かを認定するための手続です。
認定手続においては、権利者及び輸入者に対して、証拠提出及び意見陳述の機会を与え、これらの証拠及び意見等に基づいて侵害の該否が認定されます。
司法判断を介さずに税関自らが侵害判断を行うことにより迅速な取締りが可能となります。専門技術的な判断を必要とする特許権侵害についても専門委員制度等を利用して侵害の該否が判断されます。
通関解放期限との関係から認定手続開始から1ヶ月以内を目処に侵害の該否が判断されます。
疑義貨物が侵害と認定されると貨物の輸出入ができなくなります。この場合、輸出入者は、例えば、自ら貨物を廃棄したり、侵害部分を除去したり、権利者からの輸入同意書を取得する等の自発的処理を行うことができます。自発的処理が行われない場合、侵害貨物は没収・廃棄されます。

貨物の輸入ができない場合に、輸出貿易管理令に基づき経済産業大臣の承認を得たうえで、申請により貨物の積み戻しを行いこともできます。積み戻しが認めれる貨物は商標権侵害物品及び著作権(著作隣接権)侵害物品以外の貨物に限られます。

なお特許権、実用新案権及び意匠権以外の権利においては、権利者の負担を軽減する目的から認定手続の簡素化が図られています。簡素化手続においては、侵害に該当するか否かについて輸入者に争う意思がない場合に、権利者に必要とされている貨物の点検、意見の提出等を省略して侵害認定が行われます。

申立供託制度とは

輸入差止申立てに基づいて認定手続を執った場合に、認定手続終了までの間に貨物を輸入できないことにより輸入者が被るおそれのある損害の賠償を担保するために、輸入差止申立人に対して相当額の金銭の供託を命じる制度です。
申立人と輸入者との間で意見が対立し、侵害か否か認定し難い場合に供託命令が出されますが、生鮮貨物の場合は原則、供託命令が出されます。
指定した期間内に供託が行われない場合は認定手続が取りやめられ、貨物の輸入が許可されます。

供託額は(1)から(4)の額の合算となります。

  1. 認定手続中に通関することができないことにより被る逸失利益の額
    (課税価格の20%程度)

  2. 認定手続中に発生する倉庫保管料

  3. 生鮮貨物の場合は課税価格

  4. その他

点検について

申立てに基づいて認定手続が開始された場合、権利者又は輸入者は輸入しようとする貨物が権利を侵害するか否かの意見・証拠を提出するために、通知日から10(執務)日(生鮮品は3執務日)以内に貨物を点検することができます。

点検の範囲は貨物の外観等の確認に限られます。外観等の確認だけでは侵害の有無を判断できないような場合は、権利者は見本検査を申請することができます。

見本検査制度について

輸入差止申立てに基づいて認定手続が執られている場合に、申請により権利者が貨物の見本を検査することができる制度です。
貨物の外観等の点検だけでは侵害の特定が困難な貨物に対して分解・分析等の見本検査を行うことにより内部に特徴のある貨物に対しても侵害の特定が可能となります。

見本検査の承認要件は(1)から(4)となります。

  1. 証拠提出・意見陳述のために、見本の分解、性能試験、分析等を行う必要があること

  2. 輸入者の利益が不当に害されるおそれがないこと

  3. 見本の転売等、見本が不当な目的に用いられるおそれがないこと

  4. 見本の運搬、保管又は検査、見本の取扱いを適正に行う能力、資力を有していること

見本検査を行う場合は1000円程度以下と認められる場合を除き供託が必要となります。

専門委員意見照会制度とは

輸入差止申立てや認定手続において、知的財産に関する学識経験者に対して意見を求める制度です。

現在、学者5名、弁護士16名、弁理士16名が専門委員候補として挙げられており、当事者との利害関係を考慮して選定した3名に対して意見照会が行われます。
輸入差止申立ての審査においては、税関の議事進行のもと、専門委員が両当事者に意見を聴取する意見聴取の場が設けられます。

意見聴取の場において申立人と利害関係者との間で行われた意見の陳述や提出資料に基づいて専門委員がそれぞれ意見を提出します。専門委員から提出された多数意見を尊重して最終的に判断されます。

認定手続では、輸入申告が提出された貨物を対象とするため、最終判断までの時間を短縮するために、意見聴取の場を開催せずに、専門委員への意見照会のみで侵害該否が判断されることもあります。

輸入差止申立ての審査及び認定手続では、特許発明の技術的範囲の属否等のみならず、権利の有効性並行輸入及び試験研究目的の実施等についても争点となります。なお、認定手続では、特許発明の技術的範囲の属否等は特許庁長官意見照会の対象となるため、専門委員意見照会の対象とはなっておりません。

特許庁長官意見照会制度とは

特許権、実用新案権、意匠権を侵害するか否かについての認定手続中に、技術的範囲の属否等について、権利者又は輸入者が特許庁長官の意見を聴くことを求める制度です。

特許庁長官から回答があった意見に基づいて侵害の該否が判断されます。

なお育成者権侵害については農林水産大臣意見照会制度、また不正競争防止法違反については経済産業大臣に対する意見照会制度があります。

通関解放制度とは

認定手続中に輸入者が認定手続を取りやめることを求める制度です。

TRIPS協定53条第2項に基づく制度で、一定期間内に侵害の該否が判断されない場合に輸入者からの請求により貨物の輸入が許可されます。

対象となる貨物は特許権、実用新案権、意匠権の侵害するおそれのある貨物に限られます。また、輸入差止申立てが受理されている場合に限られます。

輸入者は貨物が輸入されることにより権利者が被るおそれのある損害を担保するために必要な額の金銭を供託しなければなりません。

供託額は(1)、(2)のいづれかとなります。

  1. ライセンス料相当額

  2. 貨物の販売によって得られる輸入者等の利益額(課税価格の20%目安)

音楽レコードの還流防止措置とは

物価の安いアジア諸国で生産された音楽レコード(真正品)が日本市場に流入して安く販売されることがあります。

そこで海外で生産された音楽レコード(真正品)を国内で頒布する目的で輸入することを止めることができます。

輸入を止めるためには(1)から(5)の要件を必要です。

  1. 国内で先又は同時に発行されている音楽レコードと同一の音楽レコードであって、国内における頒布を禁止していること
    海外で先に発行された音楽レコード、海外でのみ発行された音楽レコード、国内で廃盤になった音楽レコードは対象になりません。

  2. 上記(1)の事情を知りながら輸入する行為であること
    「日本国内頒布禁止」、「Not For Distribution In Japan」といった還流防止の表示をパッケージやレーベル面に表示します。

  3. 国内において頒布する目的で輸入すること
    個人的な輸入は対象になりません。

  4. 還流により権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害されること
    国外で頒布する目的の音楽レコード1枚当たりのライセンス料が国内で頒布する目的の音楽レコード1枚当たりのライセンス料の0.6以下であることが必要です。

  5. 国内で最初の発行されてから4年を経過していないこと

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青山秀夫

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青山 秀夫
代表弁理士
特定侵害訴訟代理人
一級建築士

S47 東海高校卒業
S51 名古屋工業大学卒業
S51 トヨタ自動車工業(株)入社S55 名古屋市役所入社
H17 弁理士登録
H19 知財テラス特許事務所開設

H20.12 事務所を中区に移転H21 発明協会 発明特許相談員
H29~R3 愛知県立芸術大学 非常勤講師

高木将晴

高木将晴
弁理士
特定侵害訴訟代理人
第三種電気主任技術者

東海高校卒業
立命館大学電気電子工学科卒業立命館大学院理工学研究科電子システムコース卒業
H24 知財テラス特許事務所入所H25 弁理士登録

製品化された特許のご紹介

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